待っていた芥川賞と直木賞2023上半期の候補作が発表されました!
日本文学振興会のツイッターで、2023年6月16日(金)午前5時に発表されました。
今回は、芥川賞と直木賞2023上半期の候補作と著者について、また発表日時についてもお伝えします。
第169回芥川龍之介賞候補作について
第169回芥川龍之介賞の候補作は以下の5作です。
・市川沙央「ハンチバック」(文學界5月号)
・児玉雨子「##NAME##(ネーム)」(文藝夏季号)
・千葉雅也「エレクトリック」(新潮2月号)
・乗代雄介「それは誠」(文學界6月号)
市川沙央さんと児玉雨子さんは初めて、石田夏穂さんは2度目、千葉雅也さんは3度目、乗代雄介さんは4度目のノミネートとなりました。
石田夏穂「我が手の太陽」
単行本は、2023年7月13日頃に講談社から発売予定です。
候補作「我が手の太陽」の内容については、以下のように紹介してありました。
鉄鋼を溶かす、太陽と同レベルの高温の火を扱う溶接作業は、どの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達したトップ溶接工だ。鉄鋼を溶かす間、伊東は滅多に瞬きしない。息も最小限に殺す。火が鉄板を貫通すると、その切り口が上下に破かれ初め、切断面から動脈血にも似た火花が、ただただ無尽蔵に散る。–そんな伊東が突然、スランプに陥った。
”お前が一番、火を舐めてるんだよ”
”お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。
お前自身が、誰より馬鹿にしているというのに”
“「人の上に立つ」ことにまるで関心がなく、嫌悪感すら抱いていた。
自分の手を実際に動かさないのなら、それは仕事ではなかった。”
いま文学界が最も注目する才能が放つ前代未聞の職人小説。
工事現場の花、腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。その峻烈なる生きざまを見よ!
著者の石田夏穂さんについてはこちらをどうぞ。

市川沙央「ハンチバック」
単行本は2023年06月22日に文藝春秋から発売されました。
著者の市川沙央さんは筋疾患先天性ミオパチーという難病のために人工呼吸器を使っておられます。
候補作「ハンチバック」の主人公は、市川沙央さんと同じく筋疾患により車椅子生活を送っています。
「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
圧倒的迫力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた、第128回文學界新人賞受賞作にして、第169回芥川賞候補作。
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす——。
著者の市川沙央さんについてはこちらをどうぞ。

児玉雨子「##NAME##」
単行本は2023年7月19日頃に河出書房新社から発売予定です。
候補作「##NAME##」については、以下のように紹介してありました。
光に照らされ君といたあの時間を、ひとは”闇”と呼ぶ――。かつてジュニアアイドルの活動をしていた雪那。少年漫画の夢小説にハマり、名前を空欄のまま読んでいる。
児玉雨子さんは作詞家としても有名で、多くのアーティストに歌詞を提供しておられます。
児玉雨子さんについてはこちらをどうぞ。

千葉雅也「エレクトリック」
内容については以下のように紹介されていました。
1995年、雷都・宇都宮。高2の達也は東京に憧れ、広告業の父はアンプの製作に奮闘する。父の指示で黎明期のインターネットに初めて接続した達也は、ゲイのコミュニティを知り、おずおずと接触を試みる。轟く雷、アンプを流れる電流、身体から世界、宇宙へとつながってゆくエレクトリック。新境地を拓く待望の最新作!
著者の千葉雅也さんについては、こちらをお読みください。

乗代雄介「それは誠」
単行本は2023年6月29日頃に文藝春秋から発売予定です。
候補作「それは誠」については以下のように紹介してありました。
修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる。その一日の、なにげない会話や出来事から、生の輝きが浮かび上がり、えも言われぬ感動がこみ上げる名編。
引用元 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163917214
著者、乗代雄介さんについてはこちらをご覧ください。

第169回直木三十五賞候補作について
第167回直木三十五賞候補作は以下の5作です。
・垣根涼介「極楽征夷大将軍」(文芸春秋)
・高野和明「踏切の幽霊」(文芸春秋)
・月村了衛「香港警察東京分室」(小学館)
・永井紗耶子「木挽町のあだ討ち」(新潮社)
冲方丁「骨灰」
候補作「骨灰」は以下のように紹介されていました。
何か怖そうですね。
大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。
引用元https://www.kadokawa.co.jp/product/322107000441/
冲方丁(うぶかた とう)さんの小説「十二人の死にたい子どもたち」は映画化もされ、とても話題になりましたね。

垣根涼介「極楽征夷大将軍」
候補作「極楽征夷大将軍」については、以下のように紹介されていました。
とても面白そうですね。
やる気なし
使命感なし
執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。
足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。
一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。
著者の垣根涼介さんについてはこちらをご覧ください。

高野和明「踏切の幽霊」
候補作「踏切の幽霊」については、以下のように紹介されていました。
『ジェノサイド』の著者、11年ぶりの新作!
マスコミには決して書けないことがある――
都会の片隅にある踏切で撮影された、一枚の心霊写真。
同じ踏切では、列車の非常停止が相次いでいた。
雑誌記者の松田は、読者からの投稿をもとに心霊ネタの取材に乗り出すが、
やがて彼の調査は幽霊事件にまつわる思わぬ真実に辿り着く。1994年冬、東京・下北沢で起こった怪異の全貌を描き、
読む者に慄くような感動をもたらす幽霊小説の決定版!
月村了衛「香港警察東京分室」
候補作「香港警察東京分室」については、以下のように紹介されていました。
香港国家安全維持法成立以来、日本に流入する犯罪者は増加傾向にある。国際犯罪に対応すべく日本と中国の警察が協力する――インターポールの仲介で締結された「継続的捜査協力に関する覚書」のもと警視庁に設立されたのが「特殊共助係」だ。だが警察内部では各署の厄介者を集め香港側の接待役をさせるものとされ、「香港警察東京分室」と揶揄されていた。メンバーは日本側の水越真希枝警視ら5名、香港側のグレアム・ウォン警司ら5名である。
初の共助事案は香港でデモを扇動、多数の死者を出した上、助手を殺害し日本に逃亡したキャサリン・ユー元教授を逮捕すること。元教授の足跡を追い密輸業者のアジトに潜入すると、そこへ香港系の犯罪グループ・黒指安が襲撃してくる。対立グループとの抗争に巻き込まれつつもユー元教授の捜索を進める分室メンバー。やがて新たな謎が湧き上がる。なぜ穏健派のユー教授はデモを起こしたのか、彼女の周囲で目撃された謎の男とは。疑問は分室設立に隠された真実を手繰り寄せる。そこにあったのは思いもよらぬ国家の謀略だった――。
アクションあり、頭脳戦あり、個性豊かなキャラクターが躍動する警察群像エンタテイメント!
著者、月村了衛(つきむら りょうえ)さんは予備校の先生もされていたようです。
永井紗耶子「木挽町のあだ討ち」
候補作「木挽町のあだ討ち」については、このように紹介されていました。
ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙は多くの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者という侍が仇討ちの顛末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。現代人の心を揺さぶり勇気づける令和の革命的傑作誕生!
著者、永井紗耶子さんについてはこちらをどうぞ。

芥川賞・直木賞2023上半期の発表日時について
芥川賞と直木賞2023上半期の発表は2023年7月19日(水)に、築地「新喜楽」で行われる予定です。
発表と受賞者記者会見は16時以降になります。
選考委員は小川洋子さん、奥泉光さん、川上弘美さん、島田雅彦さん、平野啓一郎さん、堀江敏幸さん、松浦寿輝さん、山田詠美さん、吉田修一さんの9名です。
こちらのニコニコ生放送で中継があります。
live.nicovideo.jp/watch/lv341750
開演16時とありますが、例年、発表はこれより遅れます。
審査が終了し、受賞者が決まったら、発表と受賞者記者会見を見ることができます。
候補者はだいたい、受賞したら会見場に来れるように近くに待機されているようですが、遠くに住んでおられたり、どうしても都合が悪い時はオンラインになることもあります。
贈呈式は、8月下旬に東京都内で行われます。
コロナ禍以前は、発表は18時以降でしたが、最近は14時に選考委員会が開かれ、16時頃に発表があるようになりました。
また芥川賞受賞作は、8月10日(木)発売の「文藝春秋」9月号に全文と選評が掲載される予定です。
直木賞受賞作は、8月22日(火)発売の「オール讀物」9・10月合併号に作品の一部と選評が掲載されます。
楽しみですね!