心淋し川(直木賞)のあらすじとネタバレ!書評は?感想も紹介!

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西條奈加さんの「心淋し川」(うらさびしがわ)が第164回直木賞を受賞しました。

私はこれを読んで、温かい気持ちに包まれ、また著者、西條奈加さんの人々を見る目の深さと想像力や表現力の豊かさに驚いています。

今回は、直木賞を受賞した「心淋し川」のあらすじとネタバレ、書評、そして感想をお伝えします。

著者、西條奈加さんについては、こちらをご覧ください。

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「心淋し川」のあらすじ

「心淋し川」は江戸の千駄木町の片隅、心町(うらまち)という貧しい地域に暮らす人々を描いた6つの短編からなる小説です。

心淋し川(うらさびしがわ)と呼ばれる淀んだ川の両岸には、古びた長屋が並んでいました。

そこに暮らす人々もまた、心に淀みを抱えながら生きていました。

それでは、それぞれの短編のあらすじを紹介します。

「心淋し川」のあらすじ

主人公は19歳のちほ。

まともに働かずに飲んでばかりいる父と愚痴ばかり言う母。

ちほの家は母とちほの針仕事で何とか生計を立てています。

早くこの家を出たいと願うちほは上絵師の元吉と恋仲になります。

元吉に自分を連れ出して欲しいと願うのですが・・・。

「閨仏」のあらすじ

六兵衛は心町長屋に4人の妾を囲っています。

その4人はなぜか器量の悪い女ばかり。

主人公は4人の中で最年長のりきです。

りきは六兵衛が持って帰ったある物に、いたずら心から仏像を彫り、その彫刻の才能が新しい出会いを生みます。

「はじめましょ」のあらすじ

心町の安飯屋「四文屋」の主人、与吾蔵は根津権現の寺社内で、聞いたことのある唄を歌う女の子に出会います。

その唄は昔捨てた女がよく歌っていたものです。

「この子はもしや自分の子では。」と与吾蔵は思うのですが・・・。

「冬虫夏草」のあらすじ

吉の息子は31歳になりますが、昔のある事件で立つこともできない体となり、酒浸りの日々を過ごしています。

吉はそんな息子の世話をする毎日。

実は由は、以前は薬種問屋、高鶴屋のおかみでした。

由は子離れができず、息子が不自由な身になったのをいいことに嫁を追い出し、息子に怒鳴られながらも息子の世話を一手に引き受けていることに幸せを感じるのでした。

「明けぬ里」のあらすじ

ようは父親の借金のせいで、15で色街に売られました。

しかし、ようは理不尽と思われることには黙って従うことができず、どこに行っても相手と喧嘩になりました。

そんなようは、元の客と結婚し世帯を持つのですが、夫はばくちうちで喧嘩が絶えません。

ようは身ごもるのですが、そのことを夫に言えずにいる時、遊郭の先輩だった明里と出会います。

「灰の男」のあらすじ

6編からなるこの作品の最終章となる「灰の男」は、全編に唯一出てきた差配の茂十が主人公です。

茂十は本名を久米茂左衛門と言い、南町奉行に仕え、諸式調べ掛りという役目を負っていました。

しかし、一人息子の命を悪党に奪われ、その上妻もなくして、この心町にやってきたのでした。

それは、息子を殺した犯人が心町にやって来たのを知り、息子の恨みを晴らすためでした。

ここでは、各編で出てきた人物が登場します。

そして、貧しくて汚い心町が本当はどういうところなのか、人間の幸せとは何なのか、そういうことを私たちに深く問いかけます。



「心淋し川」のネタバレについて

さて、この「心淋し川」のネタバレについて考えたいと思います。

小説「心淋し川」の6つの短編は、貧しい心町に住む人々のことをばらばらに描いているように思わせ、実は最後の「灰の男」に全てが集約されて、前の5編では脇役を演じてきた差配の茂十が中心人物となります。

茂十は心町に住み着いた楡爺が息子を殺した次郎吉であると確信し、その証拠を得るために心町の差配になったのでした。

しかし、最後に思わぬ展開が。

いいえ、それは冷静に考えれば分かる事実でした。

茂十と楡爺は、大事な息子をなくし、その悲しみ、恨みから一歩も前に進めない同じ境遇の持ち主だったのです。

それぞれに心に淀みを抱え、暮らしている「心淋し川」の6編に出てくる人達。

著者の西條奈加さんが、なぜ今この物語を書いたのか、そのことについて語っておられるものを見つけましたので、引用させていただきます。

何年か前から、大晦日の炊き出しの様子や、ホームレス、ネットカフェ難民を特集した番組や記事が気になってよく見ていたんです。コロナ禍以降だと、生活費を稼ぐためにUber Eatsの仕事を始めた人の話とか。
どうしてかというと、自分もいつそういう立場になるかわからないという思いがあるんですよね。作家という仕事だって、会社員と比べたら何の保証もないわけで。そんなふうに今は安定した人とそうでない弱者との間ですごく分断が進んでいる。そのことが気になって、不安な境遇に置かれた人々の物語に傾いていったのかもしれません。

引用元https://www.bungei.shueisha.co.jp/interview/saijonaka/

西條奈加さんは、今の世の中をしっかりと見つめ、苦しい状況のなかで生きている人々のことをいつも考えておられたのですね。

そして、今の課題を時代小説として著した。

すごい感性だと思います。



「心淋し川」の書評は?

今回、直木賞を受賞した「心淋し川」についての書評を調べてみました。

書評家の大矢博子さんは以下のように言っておられます。

確かに淀んだ川は汚いし、臭う。だがそんな町を指してある人物はこう言う。
「生き直すには、悪くねえ土地でさ」
なぜか。人の営みがあるからだ。ささやかな喜びと悲しみが詰まっているからだ。淀んだように見えても、中で懸命に蠢(うごめ)いているのがわかるからだ。
その集大成が最終話である。差配人がずっと抱えていた心の淀みが浄化される様子は、実に胸に染みる。
温もりが静かに心を満たす連作だ。

引用元 https://www.bookbang.jp/review/article/637926

この書評には、大変共感します。

直木賞選考委員の北方謙三さんは「心淋し川」を完成度が高い作品と評価し、以下のように語っておられます。

風変わりな長屋を舞台に、一つの世界をつくり上げた。普遍的な人間関係がしっかり描かれていた

引用元https://www.sankei.com/life/news/210122/lif2101220038-n1.html

「心淋し川」の感想も紹介

最後に、「心淋し川」を読んだ私の感想を紹介します。

1つ目の「心淋し川」を読み終わった時は、正直あまり感動もなかったのですが、2つ目からはどんどん引き込まれ、目が離せなくなりました。

「閨仏」の主人公りきは新しい出会いがあり、そこに行けば幸せになれるはずなのに長屋にとどまりました。

最終編では楡爺の世話までしているのです。

「どうして出て行かなかったんだろう。」と思いましたが、そこにはとても温かいものが漂っています。

次の「はじめましょ」の最後には驚きました。

与吾蔵は一度は捨てた女と、その子供のゆか、3人でのつつましく幸せなくらしを手に入れます。

「冬虫夏草」はぞっとしました。

母の愛は何よりも強し。

しかし、愛する息子を自分のそばに置いておきたい、自分がいつまでも世話をしたい、それはもう愛ではなくエゴでしかありませんね。

そして息子を飼い殺しすることに・・・。

「明けぬ里」に登場するようは女だてらにけんかっ早く、理不尽なことには黙っていられない。

この時代に、しかも遊郭で働く女にここまで自分の意思を通せる人がいたのかなと思いますが、西條奈加さんはきっと一人はこんな女性を描きたかったのでしょうね。

でも、ここまで男勝りのようでも、身ごもったことを夫に告げることができません。

それは夫が自分の子だと信じてくれないのではと恐れるからなのです。

いつも夫とやり合っているようの中にこんなに弱い心があるのですね。

一方、ようが羨み、色街の誰もが羨んできた明里はお腹に赤ちゃんがいる身で心中します。

どんなに着飾っても、どんなに笑顔を作っていても、その人の心の闇は晴れませんね。

その人の幸せというのは、周りからは評価できないものだと思いました。

最後の「灰の男」に全てが集約されていますね。

そこに西條奈加さんが言いたいことも詰まっています。

茂十の前の差配がこう言うところが印象的です。

傍から見れば、まさに芥箱みてえな町ですがね。汚えし臭えしとっちらかってるし。それでもね、あの箱には人がつまってるんでさ

これはまさに、いろいろと苦しい環境で生きている人々を見てきた西條奈加さん自身の言葉だと思います。

そして、こうも言います。

生き直すには、悪くねえ土地でさ

茂十は楡爺の真実を知った時、今まで自分を支えてきた憎しみや恨みから解放されました。

そしてそこには、必要以上には踏み込まないが、さりげなく助け合う心町の人々がいました。

本当に、どうして西條奈加さんはこんな物語を思いつくことができるのかと不思議です。

そこには、「生きる」ということを真摯に見つめる西條奈加さんの感性と豊かな発想、そして表現力があるのだと思います。



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