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N/A(年森瑛)のあらすじと内容!感想は?意味も解説!

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年森瑛(としもり あきら)さんの「N/A」が第167回芥川賞にノミネートされています。

この小説は文學界新人賞を満場一致で受賞した作品です。

著者の年森瑛さんは公務員をしながら、この小説を執筆しました。

N/Aは、そこから聞こえてきそうな今の若者達の言葉を通して、現代を生きる私達の課題を浮き彫りにしています。

今回は、「N/A」のあらすじと内容、感想、そしてN/Aの意味についてお伝えします。

著者、年森瑛さんについては、こちらをどうぞ。

年森瑛(としもりあきら)のプロフィール!出身大学と高校もチェック!
年森瑛さんの「N/A」が第167回芥川賞候補に!「N/A」は文學界新人賞を受賞した話題作です。年森瑛さんは公務員をしながら小説家デビューを果たした若い女性です。今回は年森瑛さんのプロフィールと経歴、出身大学と高校、結婚について調べてみました。

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「N/A」のあらすじ

まず、小説「N/A」のあらすじについて紹介します。

「N/A」の主人公は松井まどか、高校2年生です。

まどかは、生理で自分の中から血が出るのがどうしても嫌でした。

中学生の時に配られた保健室だよりに、「低体重は月経が止まる危険性があります」と書いてあるのを目にし、以来、炭水化物を抜き、食事をあまり摂らない生活を続けています。

生理はすぐに止まり、まどかはその喜びを共有できる相手をSNSで探しますが見つけることはできていません。

まどかは高校生になっても40kg弱の体重で、身長は高いので、女子校の中で王子様扱いをされ、「松井様」と呼ばれています。

また、まどかは「かけがえのない他人」を求めています。

まどかにとって「かけがえのない他人」とはがまくんとかえるくん、あるいはぐりとぐらのような「お互いの中だけにある文脈を育んだ。二人だけの唯一の時間が流れる関係性」を持った相手のことです。

まどかは「かけがえのない他人」を求めて教育実習生としてやってきた女性のうみちゃんと付き合い始めますが、「かけがえのない他人」を見つけるのは不可能ではないかと思い始めています。



「N/A」の内容について

「N/A」には、以下のような内容が書かれています。

「自分は自分であって属性の中の一人ではない」という訴え

まどかは生理で血が出るのが嫌で、生理を止めるために食事制限をしています。

しかし母親は、まどかを拒食症だと思い込み、まどかのいないところでいろいろと心配したり、拒食症の娘をどう扱ったらいいのかを調べたりしています。

でも、まどかは全く「拒食症」という属性には入らないのです。

また、まどかは「かけがえのない他人」を求めてうみちゃんと付き合い始めたのですが、周りの友人はまどかをレズビアンと認識し、LGBTの枠の中に入れようとします。

そのような中、まどかの心は「私は私だと認められたい!」と叫ぶのです。

インターネットが普及した現代の共通した行動

インターネットが普及し、誰もが何か調べたい時はすぐにググります。

またSNSを上手に使い、自分のことを発信したり共感者を集めたり、人とつながろうとします。

母親は、拒食症だと思っている娘をどう扱ったらいいのか、パソコンで「子ども ダイエット やめさせる」「拒食症 親 対応」などと検索します。

まどかも、生理が止まった喜びを共感できる人を求めて、Twitterで「生理 こない」や「生理 こない 嬉しい」と検索します。

また、人に言葉をかけるのも、相手を傷つけないようにネットからふさわしい言葉を選ぶのです。

「自分は自分だ」と心のうちで叫ぶまどかもやはり同じで、友達を傷つけないように、LINEに入れる言葉をネットで検索し始めます。

そして、そこには彼女にだけかける言葉は一つもないことを痛感するのでした。

まどかは成長の途上

自分という人間をある属性の中で識別して欲しくないと思うまどか。

しかし、まどか自身も人を枠の中で判断しようとしていたのでした。

物語の最後、思わぬところで出会ったうみちゃん。

うみちゃんは以前、まどかのことを同姓の恋人としてTwitterで紹介していました。

そんなうみちゃんから声をかけられ、ニトリの店内で生理の血が服についているというどうしようもなく恥ずかしい場面から助けられたまどか。

まどかは復縁をしたいという下心でうみちゃんが自分に親切にしていると思います。

でも、うみちゃんは言います。

恋愛じゃないと他人に優しくできないとか、そんなわけないじゃん

その時、まどかは気づくのです。

うみちゃんは、恋人でもないし、友だちでも、先輩でも、先生でも、家族でもなかった。

まどかにとって何者でもない人だった。

だけど、うみちゃんのことを好きかもしれないと思った。




「N/A」の感想を紹介

次に「N/A」を読んだ私の感想を紹介します。

独特の表現力に脱帽

まず、著者、年森瑛さんの表現力というか(わざと考えた訳じゃない)言葉の巧みさに驚きました。

年森瑛さんにとって、言葉というものは実在して目に見えるもののようです。

例えば、

扉が勢いよく開かれて、クリーナーの轟音を飛び越えてきーっと叫んだ。

人間をたらふく詰め込んだ電車がゆっくりと腰を上げた。

何度会っても、うみちゃんとの会話のほとんどは脊髄反射に近かった。

まだまだあるのですが、私は年森瑛さん独特の表現を探すのが楽しかったです。

マイノリティーへの理解や共感って?

この小説に出てくるマイノリティーは拒食症やLGBT。

現代は少し前までは否定する人が多数だったマイノリティーへの理解と共感が広がっていますよね。

「少数派の人のことも重んじよう」とか「生きづらさを理解しよう」とか。

でも、この小説を読んで感じたことは、当たり前ですけど人は全部違い、違った感性を持つ生き物です。

例えばAさんとBさんがLGBTという属性に入っていたとしても、その部分だけは共通かも知れませんが、その他の部分は全部違う。

今の私達はそのことを軽んじて、「少数派の人を理解して傷つけないように」と行動し、本当はその人のことを分かっていないのに分かったふりをして、「私は仲間だよ。」と笑顔を向けていないか、そんなことを考えさせられました。

同じ属性に入る人達の共通点を知ることではなく、その人自身を知ることが大事ではないかと。

「N/A」の意味を解説

この小説のタイトルである「N/A」にはどういう意味があるのでしょうか?

本文中にはそのことに触れてありませんが、本の帯の最後にこう記載してあります。

N/A
abbreviation for
1.not applicable.
2.not available.
うーん、いまいちよく分かりませんね。(汗)
ウィキペディアには、こう書いてありました。
n/aN/Aは、該当なし (not applicable)、あるいは利用できない (not available) を意味する英語の略語で、主に表などにおいて使用される。
なるほど。
まどかはどの属性にも該当しない一人の人間であって、まどか自身、そう生きていきたいと思うのです。
それは、どこに属していなくても卑屈になることも慌てて同種を探す必要もない、著者、年森瑛さんの生き方にも重なるものかも知れません。




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