聖子の若年性認知症が少しずつ進行していること。彩子の17歳の娘、美保が大きなおなかで訪ねてくること。さらには、DV夫の影がちらつくこと。さまざまな問題を孕(はら)んで、物語は波乱含みで進んでいくが、人物造形はよく構成と展開もよく、驚くほど滑らかだ。ある種の感慨がこみ上げて来るラストまで、一気読みの傑作といっていい。