温
かい、とにかく温かい。
これが「そして、バトンは渡された」を読み終えた時の私の感想です。
それは、作者、瀬尾まいこさんの温かさ、そのものだと思います。
瀬尾まいこさんは、中学校の先生をしながら小説を書いてこられました。
瀬尾まいこさんはきっと、いろんな家庭の事情を抱えた子ども達をいつも愛情に溢れたまなざしで見てこられたんだと思います。
この「そして、バトンは渡された」にも、その温かいまなざしが詰まっています。
「そして、バトンは渡された」はキノベス2019で1位となり、2019年本屋大賞にもノミネートされています。
今回は、「そして、バトンは渡された」のあらすじやネタバレ、映画化、そして名言についてお伝えします。
作者、瀬尾まいこさんについては、こちらをご覧ください。
2018年本屋大賞に輝いた「かがみの孤城」と作者、辻村深月さんについてはこちらをどうぞ。
【追記】
「そして、バトンは渡された」が2019年本屋大賞に選ばれました!
瀬尾まいこさん、おめでとうございます!
「そして、バトンは渡された」のあらすじ
まず、「そして、バトンは渡された」のあらすじを紹介します。
この本の主人公、優子には3人の父親と2人の母親がいます。
少し詳しく説明すると、優子を産んだ実の母親は、優子が3歳になる前に交通事故で亡くなりました。
それで優子は実の母親のことは何も覚えていません。
母親が亡くなってから、優子は父親と祖父母に大切に育てられました。
優子が小学3年生になった時、父親は梨花さんと再婚します。
梨花さんは優子の母親になれたことをとても喜び、優子をとても大切にしてくれます。
しかし、優子が5年生になった時、父親はブラジルに転勤になり、しかも梨花さんと別れることになりました。
優子は父親とブラジルに行くか、梨花さんと日本に残るかの選択を迫られ、友達と離れたくないという理由で、日本に残ることを選びます。
それから優子と梨花さんの二人暮らしが始まりました。
優子は父親には会いたいのだけれど、それなりに楽しい生活をしていました。
小学6年生になった時、優子が「ピアノを習いたい。」と言ったことがきっかけで、梨花さんはお金持ちの泉ヶ原さんと結婚します。
優子の望みを叶えたかったのです。
優子の生活は一変し、中学時代はピアノのレッスンを受け、裕福な暮らしをすることになりました。
しかし、梨花さんは何もしなくていい退屈な生活が嫌になり、泉ヶ原さんの家を逃げ出すのです。
優子は、今度は2番目の父親、泉ヶ原さんと暮らすことになります。
泉が原さんはとても優しい人で、優子を温かく見守ってくれていました。
ところが、中学を卒業した春休み、梨花さんは森宮さんと再婚して、優子を連れて行くのです。
森宮さんもとてもいい人で、突然高校生の娘を持ったのに、父親の責任を果たそうと、優子のために一生懸命でした。
ところがところが、梨花さんは今度は森宮さんのところを出て行き、優子は森宮さんと二人暮らしになります。
それでも、森宮さんは父親として優子を育ててくれます。
まだ若く、優子とは20歳くらいしか違わない森宮さんと優子。
何のつながりもないこの二人は、素敵な親子の関係を紡いでいきます。
こうして優子には3人の父親と2人の母親ができたのです。
「そして、バトンは渡された」のネタバレ
それでは、「そして、バトンは渡された」のネタバレについて見ていきましょう。
バトンとは?
「バトンが渡される」とは、優子の親権がバトンのように次々に渡されていくことを言っているのだと思います。
しかし、どの親も優子に愛情を注いで、優子の親として一生懸命でした。
バトンというのは、単なる親権だけではなくて、優子の親になったことでもたらされる幸せだったのかも知れません。
親が変わるということは悲劇なのか?
私たちは、大人の事情で親が変わるということは、その子にとって悲劇で、同情すべきものと思ってきたのではないでしょうか?
でもそれは大変な間違いだったと、「そして、バトンは渡された」を読んで気づきます。
親が変わったからと、また実の親ではないからと同情することはいかに失礼なことだったかと。
親子の関係は血のつながりが一番ではない
「血がつながっている」ということは絶対的なことのように思われますが、そうではないことは、最近の悲惨な事件からも分かりますね。
血のつながりよりも、愛情と信頼で関係を作っていくこと、そのことの方が大事なことだと、この小説は教えてくれます。
でも、血がつながっていることを軽視するわけではなく、血がつながっているからと安心するのではなくて、互いに相手を尊重し、大事にしなくてはいけないということではないでしょうか。
優子の結婚式でのバトン
優子の結婚式の時、実の父親の水戸さんが来てくれます。
結婚式で花嫁のエスコート役になっていた、現在の父親の森宮さんは、直前にその役を水戸さんに変わろうとしますが、優子はそれは絶対に森宮さんにして欲しいと言います。
優子はどの親も大好きですが、最後に親子として関係を紡いだ森宮さんから結婚相手の早瀬君に自分を渡して欲しかったのです。
こうして、優子というバトンは早瀬君に渡されました。
合唱の場面
この小説には優子の高校時代の合唱コンクールの場面が出てきます。
そこでいくつかの合唱曲が紹介されます。
父親の森宮さんの高校時代の合唱曲のことも。
優子がピアノ伴奏をしてクラスが歌う「ひとつの朝」、早瀬君伴奏の「大地讃頌」・・・それらの曲のことがとても詳しく説明してあります。
それらの合唱曲を練習した人やそこに関わった人しか分からないような。
それは、作者の瀬尾まいこさんが中学校の教師をしていて、担任もしたことのある人だからできることです。
そこには、ご自分の教師時代の体験がおおいに生きています。
教師時代、生徒達とともに合唱コンクールに燃えておられたのでしょうね。
「そして、バトンは渡された」の映画化は?
「そして、バトンは渡された」の映画化はあるのでしょうか?
この物語は映画化をしたらとてもよいと思いますが、今のところ、まだ映画化の予定はないようです。
瀬尾まいこさんの作品では、「幸福な食卓」、「天国はまだ遠く」、「僕らのごはんは明日で待ってる」が映画化されています。
「そして、バトンは渡された」の映画化を望む声はたくさんあるようです。
私も、ぜひ近いうちに映画化されて欲しいと思います。
「そして、バトンは渡された」の名言もチェック!
最後に、「そして、バトンは渡された」の中の名言をご紹介しますね。
「自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなんて、すごいと思わない?」
「森宮さんは、梨花さんが出て行って、高校生の娘だけ押しつけられるなんて気の毒だ。」と思う優子に向かって、森宮さんが言うセリフです。
「ああ、そうなのかー。」
私も親ですが、この文を読んで、「親になるって、明日が二つになることなんだな。」としみじみと考えました。
「自分じゃない誰かのために毎日を費やすのって、こんなに意味をもたらしてくれるものなんだって知った。」
これ、ほんと、そうだよなあって思います。
実は私も中学教師だったのですが、私が中学3年生の担任をしていた時、ある事情で高校入試の前日に家出をした子がいました。
それを知ったクラスの子達は、夜中まで一生懸命に探し回りました。
その子を見つけ出し、無事、家に連れ戻した後、それぞれの家に帰る時、一人の子が言います。
「誰かのために時間を使うって気持ちいいね。」
「そして、バトンは渡された」まとめ
今回は「そして、バトンは渡された」のあらすじのネタバレ、映画化、名言についてお伝えしました。
いかがでしたか?
まだ読んでおられない方、ぜひ、読んでみてくださいね。
2019年本屋大賞の発表は4月9日(火)です。
私はこの本に、本屋大賞、取って欲しいなあと思います。
【追記】
瀬尾まいこさん、2019年本屋大賞受賞、本当におめでとうございました!