第162回芥川賞が古川真人さんの「背高泡立草」に決定しました。
古川真人さんは、デビューしてまだ4年。
それなのに4度も芥川賞にノミネートされて、今回めでたく受賞されました。
すごい方ですね。
古川真人さんの小説は、いつも長崎の離島が舞台になり、そこの方言が使われます。
今回の「背高泡立草」もそうですが、私は九州、熊本の出身なので、少し違うとは言え、とても親近感を持って読むことができました。
今回は、第162回芥川賞に輝いた古川真人さんの「背高泡立草」のあらすじや内容、ネタバレ、感想そして発売日についてご紹介します。
作者の古川真人さんについてはこちらをご覧ください。
第162回直木賞受賞作「熱源」と作者、川越宗一さんについてはこちらをどうぞ。
「背高泡立草」のあらすじや内容について
カメラ兄さんさんによる写真ACからの写真
大村奈美は、福岡のアパートで一人暮らしをしています。
ある日、奈美は母の実家である吉川家の納屋の草刈りをするために、長崎の島に向かいました。
その納屋は20年以上も前から誰も使わず、放っておかれた納屋です。
そんな納屋の草刈りをどうしてしないといけないのか、またどうして自分がしないといけないのか、納得できず、奈美は迎えに来た母の車に不機嫌な顔で乗り込みます。
なぜ草刈りをしないといけないのかと尋ねる奈美に、母は「良いやないね。」の一言で済まそうとしました。
それでもしつこく尋ねる奈美に、母は、島では昔から暮らしている家やその周辺は、できるかぎり修繕をして、荒れたままにしないのが慣習で、草もそのままにしていたら隣家に迷惑がかかるからと答えるのでした。
途中、母の車には伯母や従姉妹も乗り込んで、長崎へ向かいます。
そうやって不満な気持ちで草刈りを始めた奈美ですが、叔父や祖母の姉から母の実家、吉川家についての話を聞きます。
吉川家には「古か家」と「新しい方の家」の2つがありました。
祖母が亡くなって以来、今はどちらも空き家になっています。
吉川家は「新しい家」が建っている場所で酒屋を営んでいましたが、戦時中の統制が厳しくなり、廃業に追い込まれます。
そして家を買い、「古か家」に移り住むことになりました。
吉川家のことだけでなく、この島の歴史についても聞きました。
江戸時代には捕鯨が盛んで、漁のために、長崎のこの島から蝦夷に行った人々もいました。
戦後には、故郷の朝鮮に帰る途中に船が難破して、島の漁師に助けられた人々もいました。
また鹿児島からカヌーに乗ってやってきた少年もいたとのこと。
奈美は草刈りをしながら、2つの家に、そしてこの島に流れた時間を思いました。
草を刈りながら表れてきたのは納屋だけではない、家と島の大事な歴史だったのです。
「背高泡立草」のネタバレは?
この「背高泡立草」の舞台となっている島は、長崎県平戸市の的山大島(あづちおおしま)です。
この島は「背高泡立草」の作者、古川真人さんの母、千穂さんの故郷です。
「背高泡立草」の主人公のモデルは母方の祖母、内田玲子さんで、的山大島で食料品店を営んでおられるそうです。
現在88歳になられます。
この島は人口が1,000人程の島ですが、江戸時代には捕鯨が行われていたり、戦時中は満州移住があったりと、ここに暮らす人々の喜びや悲しみの歴史が詰まっています。
古川真人さんは的山大島の美しい光景や方言を使って、家と島の歴史を描かれました。
「背高泡立草」の感想も紹介!
それでは、「背高泡立草」を読んだ方の感想を少し紹介しておきます。
最初は一文が長すぎて読みづらかったり、小説なのに()で説明書きされていたりと、細かい点が気になった。それをすべて忘れさせる斬新性、モノにまつわるそれぞれのストーリーの面白さ。ラストの締め方も無駄がなく読みやすい。序盤のイメージとは良い意味で予想外だった。「さすが芥川賞候補作」と思わせてくれるのが単純に嬉しい。
引用元 https://bookmeter.com/books/15021329
生きることと認識することと忘れること、そして忘れながら記憶を時に書き換えたりもしながらもたどたどしく土地の言葉で語ること、そんな世界の有り様が全て混在一体化した状態で並立化されていて、書くという作業でこの一連を体系化しているのが古川小説なのかな、とそんなことを思ったり考えたりしたのでした。
引用元 https://natsumiyo.xyz/2019/10/23/seitakadok/
この作品を読むと、空間そのものにも歴史はあると思わされます。そう考えると、主人公たちが草刈りをしている現在の空間も、次の世代に引き継がれていきます。では、タイトルの「背高泡立草」は何を示すのでしょう。(中略)背高泡立草の花言葉は、「生命力」です。背高泡立草が「母の親族」を示しているように感じました。「納屋」と「背高泡立草」の関係=「空間」と「母の親族」の関係というように。
『背高泡立草』古川真人(著)の感想【草刈りする理由】(芥川賞受賞) - いっちの1000字読書感想文草刈りする理由 主人公の母の実家に、使われないまま放置されている納屋があります。 納屋の周りには草が生い茂っており、その草を刈るため、親族が集まります。 主人公 母 母の姉 母の姉の子 母の兄 主人公は、草を刈る必要はないと思っています。 ...
「背高泡立草」の発売日は?
第162回芥川賞受賞作「背高泡立草」は「すばる」2019年10月号に掲載された作品です。
実はまだ単行本は発売されておらず、単行本の発売は1月24日頃の予定です。
本を手に入れたい方は1週間ほど待たなければいけませんね。
紙の本と同時に電子書籍も発売予定です。
芥川賞を受賞した話題の本ですので、購入を考えておられる方は、こちらから予約をされたら確実だと思います。
こちらは紙の書籍です。
こちらは電子書籍です。
まとめ
今回は第162回芥川賞を受賞した古川真人さんの「背高泡立草」のあらすじや内容、ネタバレ、感想そして発売日についてご紹介しました。
いかがだったでしょうか?
家や故郷の歴史、私も探ってみたいという気持ちにさせられました。
読みやすくておすすめですよ。
皆さんも「背高泡立草」を読んで、自分に関わる歴史について思いを馳せてみられてはいかがでしょうか。