相沢沙呼さんの「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」は「
このミステリーがすごい! 」2020年国内編の第1位を獲得し、同時に「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング1位、「2019年ベストブック」 ベストミステリー1位とミステリー部門で3冠を達成しました。
そして2020年本屋大賞にもノミネートされています。
「全てが、伏線」という本の帯が強烈で、そして有名なミステリ作家達の評価が高く、これは見過ごすわけにはいかないと、私も読んでみました。
確かに、多くの人の高い評価に違わず、すごいミステリ小説でした。
今回は「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」のあらすじと感想、ネタバレそして評価についてお伝えします。
但し、まだ読んでいない方はネタバレのところは飛ばしてくださいね。
著者、相沢沙呼さんについてはこちらをご覧ください。
また昨年、一昨年の本屋大賞受賞作品については、こちらをご覧ください。
この2冊も、本当に読んでよかったと思えた小説です。
「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翠」のあらすじ
まず、「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」のあらすじについてお伝えします。
この本の重要人物は、本のタイトルにもなっている城塚翡翠(じょうづか ひすい)という自分のことを「霊媒」と名乗る20代の美女と推理作家の香月史郎です。
二人は警察に協力し、霊視の力と論理的思考を組み合わせて、いくつかの殺人事件を解決してきました。
ここで、この本の目次を紹介しておきます。
プロローグ
第一話 泣き女の殺人
インタールードⅠ
第二話 水鏡荘の殺人
インタールードⅡ
第三話 女子高生連続絞殺事件
インタールードⅢ
最終話 VS エリミネーター
エピローグ
推理作家、香月史郎は後輩の結花に、一緒に霊媒師に会って欲しいと頼まれます。
結花は、占い師に「女の人が見て泣いている。」と言われて以来、恐怖を感じるようになり、霊媒師の城塚翡翠に相談したいということでした。
城塚翡翠は直接、その場の空気を感じたいと言い、香月史郎と共に結花のマンションを訪れることになりました。
しかし、マンションに着いた時、結花は何者かに殺されていました。
城塚翡翠は死者の霊を自分に降ろすことができ、そのおかげで犯人を特定することができました。
しかし、それでは証拠能力はないので、香月史郎が論理を組み立て、証拠を導きます。
この事件(第一話の泣き女の殺人)をきっかけに香月史郎と城塚翡翠は親しくなり、二人は力を合わせて、第二話の水鏡荘の殺人や第三話の女子高生連続絞殺事件を解決することができました。
城塚翡翠は、霊媒師の仕事をしている時と普段の印象は全く違い、普段は純粋で世間知らずでとても可愛い女性でした。
香月史郎は城塚翡翠に惹かれていきます。
また、それぞれの事件が解決した後に書かれる「インタールード」というところには、未解決の連続殺人事件の犯人である鶴丘文樹の狂気的な殺人現場が描写されています。
「インタールード」というのは幕あいという意味だそうです。
「何で、こんなのが挟まれるの?」と最初は疑問ですが、後で分かってきます・・・。
「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」の感想
次に「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」を読み終えた感想ですが、とにかくその先を知りたくて、どんどん読み進めることができました。
推理作家、香月史郎は城塚翡翠が霊の力によって導き出す犯人が真犯人であることを証明するために、論理的で説得力のある説明を考え、事件を解決していくのですが、その手法が斬新で、この小説を大変おもしろいものにしていました。
私の一番の感想は、著者の相沢沙呼さんはものすごく頭のいい人だということです。
ネタバレになっちゃいますが、最後の部分で城塚翡翠が3つの事件で、どうやって犯人の特定に至ったかを丁寧に解説しています。
霊の力ではなく、そこにある事実と推理の力で短時間に真犯人を導き出す、これは小説の中では城塚翡翠がやっているのですが、実際には著者である相沢沙呼さんの思考なので、相沢沙呼さん、すごいなあと思わされます。
また、最後の方で城塚翡翠がこう語っています。
真実に至る論理がたった一つでなければならない道理なんて、どこにもありません。面白い発見でした。
これも「なるほどー。」と思わされる部分です。
そうか、同じ答えでも、それにたどり着くために複数の考え方があるということなんですね。
普段、あまり自分の頭を使わない私には、大変大きな刺激でした。
「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」のネタバレについて
「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」のネタバレは、作品をまだ読んでおられない人は絶対に見てはいけません。
これを見たら、この作品の凄さを感じることができなくなってしまいます。
ですから、このネタバレの部分は、一度作品を読んだ人だけが見てくださいね。
香月史郎は以前にとても大切な女性をなくしているというのは、最初から想像できます。
その大切な女性とは、彼の血の繋がっていない姉でした。
姉は、強盗に会い、腹部にナイフを刺されて帰らぬ人となってしまったのです。
1つの事件が解決する度に表れる「インタールード」で、連続殺人犯の鶴丘文樹は、被害女性にナイフを刺しながら「痛いのか?痛くないだろう?」と問います。
そして「向こうには何があるのか?」とも。
ナイフを刺され、死ぬ間際の人間がそんな問いに答えられるはずはありません。
それで鶴丘文樹の実験は失敗し、何度も同じ犯行を繰り返さなければいけませんでした。
被害者になるのはいつも若く、美しい女性・・・。
最初、この「インタールード」が何なのか、香月史郎と城塚翡翠とは関係ないように思われ、いずれ、この二人がこの事件に関わるのだろうくらいに考えていましたが、結末は関わるなんてものじゃなく、「あー!!!!」って感じです。
香月史郎の姉は腹部をナイフで刺され、それを見た幼い香月史郎は姉を助けるために必死でそのナイフを抜きます。
でも結果、そのために、姉は出血多量で死に至るのでした。
このことを知り、私は背中がゾーッとしました。
ということは、狂気的な連続殺人を犯していたのは・・・。
「うわっ、やめて欲しい!それはありえない!今まで香月史郎を信頼して、この小説を読み進めてきたのに、それだけはいやだー!」
と私は思いました。
でも無情にも、連続殺人犯、鶴丘文樹は香月史郎だったのです。
香月史郎は姉の腹部からナイフを抜いた時に、姉は痛かったのかどうかを知りたかったのです。
そして、とうとう香月史郎は次の狙いを城塚翡翠に定め、彼女に姉の霊を降ろし、姉が痛かったかどうかを聞き出そうとします。
後で城塚翡翠が解明しますが、香月史郎と鶴丘文樹という何のつながりもないような2つの名前ですけど、実は香月史郎という名前は「つるおかふみき」を並べ替えて作ったものでした。
しかし!ここで読者は、もう一度打ちのめされることになります。
あの可愛らしい城塚翡翠は全て演技だった。
彼女は霊媒師などではなく、推理力に長けた奇術師。
警察と協力して連続殺人鬼を捕まえるために香月史郎に近づいたのでした。
ここで本のタイトルにある「霊媒探偵」という言葉が出てきます。
嘘でしょう・・・。
ずっと、可愛くて純粋で一生懸命な城塚翡翠を信じて物語を読み進めてきたのに。
著者、相沢沙呼さんは城塚翡翠にこう語らせています。
わかりやすい謎を提示し、あえて読者に解かせ、それを解決しないまま物語を進めて、まったく違う答えや隠されていた最大の謎を示すのです
これは、著者の私達読者に向けた言葉なのですね。
ああー、読者は著者、相沢沙呼の手の中で弄ばれ、裏切られる・・・。
唯一の救いは、エピローグに描写されている城塚翡翠の姿でした。
本当の彼女はやはり、可愛くて孤独な女の子だったんですね。
「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」の評価は?
最後に「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」に対する評価についてお伝えします。
「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」はこのミステリーがすごい! 2020年国内編の第1位を獲得し、同時に本格ミステリ・ベスト10 2020年版国内ランキング1位、2019年ベストブック ベストミステリー1位とミステリー部門で3冠を達成しました。
このことから分かるように、「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」は非常に高い評価を受けています。
国内の著名なミステリ作家の皆さんからも高い評価を受けました。
一部、引用させていただきます。
ミステリ界随一の本格的な奇術家【マジシャン】でもある相沢沙呼の、巧妙にして実にイジワルな、それでいて実に胸の空【す】く一撃!
綾辻行人さん
この探偵のどこが凄いのかについては、読んだ人としか語り合えません。最後まで読み切った人としか……(含み笑い)。
有栖川有栖さん
いや、ほんとにそうですよね。
自ら禁じ手としていた殺人事件を解禁した相沢沙呼はやはり強かった……。
青崎有吾さん
「全てが、伏線」の初刷帯に偽りなし。本年度の必読作です!
浅ノ宮遼さん
帯でハードルを上げまくったのは正しかったと納得。というか感嘆。これは相沢沙呼にしか書けない傑作だと思う。
芦沢央さん
これはまさに超力作の傑作。僕は特殊ミステリの最新形態と呼びたいです。特殊性をああ使うとは!
今村昌弘さん
「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」は、有名なミステリ作家たちから、このような高い評価を受けました。
そう言えば、著者の相沢沙呼さんはミステリ作家であり、マジシャンでした。
その2つの経験が「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」には十分活かされていますね。
相沢沙呼さん、恐るべしです。
まとめ
今回は、ミステリ3冠を達成し、本屋大賞にもノミネートされた、相沢沙呼さんの「medium(メディウム) 霊媒探偵城塚翡翠」のあらすじと感想、ネタバレ、評価についてお伝えしました。
本当にびっくりの一冊でした。
皆さん、どうぞご自分で、この驚きを体験してくださいね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。