こんにちは。
「孤狼の血」などの作品で爆発的な人気を誇るベストセラー作家、柚月裕子さんの「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」が文庫化され、
週間ベストセラー 文庫ランキングで第14位に入りました。
ほんとに柚月裕子さんの本って、次から次にヒットしますよね。
私も「合理的にあり得ない」というタイトルに惹かれ読んでみました。
うーん、サクッと読めてなかなか面白かった!
今回は、柚月裕子さんの「合理的にあり得ない」のあらすじと感想、考察そして登場人物についてもお伝えしますね。
人気作家、柚月裕子さんについてはこちらをどうぞ。
「孤狼の血」についてはこちらをどうぞ。
「孤狼の血」シリーズの完結編「暴虎の牙」についてはこちらをご覧ください。
「合理的にあり得ない」のあらすじ
「合理的にあり得ない 上水流涼子の解明」は弁護士資格を剥奪され、探偵業を営んでいる上水流涼子と、東大出でIQ140の助手、貴山があり得ない事柄を解決し、依頼をこなしていく短編5つからなっています。
目次は以下のようになっています。
確率的にあり得ない
合理的にあり得ない
戦術的にあり得ない
心情的にあり得ない
心理的にあり得ない
目次を見ただけで、どんなあり得ない話があるのか、ワクワクしますよね。
それでは、それぞれのあらすじを簡単に見ていきましょう。
「確率的にあり得ない」のあらすじ
父親の後を継いで社長になった本藤仁志は人望があり、社員からも信頼されています。
しかし決断力がなく、大事な場面では母親に相談していました。
そんな本藤の前に、予知能力があるという高円寺裕也が現れます。
高円寺は本藤の前で、確率的にあり得ない予知能力を発揮し、本藤は高円寺に全幅の信頼を置くようになります。
そして高円寺を会社の顧問にし、大金を払って大事な決断を委ねるようになるのです。
上水流涼子と貴山は、美貌と演技力、そして高い知能と推理力で高円寺のトリックを見破り、化けの皮をはがしていくのです。
「合理的にあり得ない」のあらすじ
神崎恭一郎はバブル絶頂期に不動産取引で大儲けし、今は悠々自適の生活を楽しんでいます。
しかし最近、妻が家を空けることが多く、口座から計2千万円もの大金を夫に内緒で引き出していることが分かりました。
神崎には引きこもりの息子がおり、引きこもりの原因は中学時代のいじめでした。
神崎がバブル期に詐欺まがいの行為をし、人をだまして儲けていたことが報道され、息子はそのことでいじめられるようになったのです。
一方、自分の工場を失い、借金も膨らんで自殺をした松下昭二の妻は、夫の7回忌で、夫は神崎にだまされていたことを知ります。
松下の妻から神崎への復讐を依頼された上水流涼子と貴山は、合理的にあり得ない方法で依頼を遂行していきます。
「戦術的にあり得ない」のあらすじ
これは、やくざの世界の将棋対決のストーリーです。
関東幸甚一家の総長である日野は横山一家の総長、財前と五分五分の勝負をしてきました。
ところがある時から、財前の腕が急に上がり、日野は財前に負け続けることに。
今度の対戦で終わりにしたい日野はどうしても勝ちたいと、上水流エージェンシーに依頼しに来るのです。
東大将棋部で主将をしていたと言う貴山は、みごとな知能と推理で、財前がコンピューターソフトを使っていたことを暴き、日野を勝利に導きます。
「心情的にありえない」のあらすじ
諫間慶介から孫を探して欲しいという依頼があります。
しかし、諫間慶介は上水流涼子にとって、最も憎むべき人物です。
貴山はそんな男からの依頼は絶対に受けないように言います。
心情的にあり得ないことです。
しかし上水流涼子は2度と敗北したくないという思いで、この仕事を受けます。
ここには上水流涼子が弁護士資格を剥奪された理由や貴山との出会いなど、この小説の根幹を成すストーリーが含まれています。
それをここでお伝えするのはとてももったいないことなので、ぜひご自分で読んでくださいね。
「心理的にあり得ない」のあらすじ
これは野球賭博の話です。
上水流涼子は野球賭博に手を出して大金の借金を背負い、自殺した男性の娘、由梨から真相を調べて欲しいという依頼を受けます。
これも貴山の素晴らしい知能と演技力が真相を突き止めます。
「合理的にあり得ない」の感想
「合理的にあり得ない」を読んでの最初の感想は、「テレビドラマにしたらヒット間違いなしだよね。」ということです。
たぶん「合理的にあり得ない」を読んだ多くの人はそういう感想を持たれると思います。
難問を美貌と知能で解決していく痛快さは皆が喜ぶところだからですね。
それから貴山はすごく頭がいいですけど、本当に頭がいいのは著者の柚月裕子さんですよね。
柚月裕子さんが貴山を作っているのですから。
それに、大きな話題になったコンピューター将棋ソフトや野球賭博の話が盛られていて、さすが柚月裕子さんと感服します。
よほどその世界のことを勉強しないと、こんな風には書けないでしょうね。
それでは、「合理的にあり得ない」を読んだ方達の感想をいくつか紹介します。
さすがの柚月さん、読みやすく、グッと引き込まれて面白かったです。
短編それぞれのタイトルがいいですね。
どの話もテンポよく進んでいき、読後に爽快感がある。
今までの柚木さんの作品に比べたら現実味がない。でも肩に力が入らず、面白く読めた。
助手の貴山の方が大活躍。過去が謎めいていて興味が沸く。
「合理的にあり得ない」についての考察
それでは、「合理的にあり得ない」についての考察もしておきたいと思います。
まず、「合理的にあり得ない」はいつもの柚月裕子作品とは違って、娯楽として気軽に楽しめるものです。
それで、「合理的にあり得ない」が書かれた背景を考察してみました。
「合理的にあり得ない」が出版されたのは2017年の2月です。
2017年と言えば、柚月裕子さんの長編ミステリ小説「盤上の向日葵」が出版された年です。
「盤上の向日葵」は2015年から2017年にかけて読売プレミアムに連載されたもので、白骨死体事件を地道な捜査と天才棋士の辛い生い立ちが並行して描かれています。
「盤上の向日葵」は「将棋界を舞台にした『砂の器』」とも言われる程の重厚な作品です。
柚月裕子さんは、この作品のために将棋界については万全の取材をしています。
また同じ時期に、「孤狼の血」シリーズの1作目「孤狼の血」が文庫本になっています。
「孤狼の血」は暴力団の世界の激しい抗争を描いています。
ですから柚月裕子さんは将棋や暴力団の世界については大変詳しい知識を持っておられるのです。
「合理的にあり得ない」は柚月裕子さんの新しい作風という考察もありますが、このように時間的背景を見てみると、それは当てはまらないのではないでしょうか。
新しい作風ではなくて、「盤上の向日葵」や「孤狼の血」の執筆のために得た知識や人を惹きつける人物設定と文章力を駆使して、柚月裕子さん自身がちょっと合間の娯楽を楽しんだ作品ではないかと思います。
それで「合理的にあり得ない」は著者と読者が共に気軽に楽しむものだと思います。
「合理的にあり得ない」の登場人物について
最後に、「合理的にあり得ない」の登場人物に触れておきたいと思います。
まず主人公の上水流涼子。
上水流涼子は不祥事(本当ははめられたのですが)を起こし弁護士資格を剥奪され、現在はその美貌と明晰な頭脳を生かし、探偵エージェンシーを運営しています。
年齢は30代。
次に助手の貴山。
東大出でIQ140。
普段はお茶を淹れるなどの雑用をしていますが、依頼が入ると抜群の知能と実行力で上水流涼子以上の活躍ぶり。
冷静沈着ですが、なかなか魅力的なキャラです。
あと、それぞれの短編の登場人物はいいとして、あと二人、重要な人物を紹介しておきます。
一人は諫間慶介。
諫間は上水流涼子の雇い主だったのですが、巧妙な手口で彼女を陥れ、弁護士としての立場を奪った張本人です。
そしてもう一人は丹波勝利。
丹波は涼子の傷害事件を担当した刑事で、涼子の傷害事件には裏があると思っていましたが、証拠がつかめずにいました。
今では丹波と上水流涼子は持ちつ持たれずの関係になっています。
以上、「合理的にあり得ない」ではこの4人の登場人物を把握しておけば大丈夫だと思います。
まとめ
今回は、2020年5月に文庫化され、話題になっている柚月裕子さんの「合理的にあり得ない」のあらすじと感想、考察そして登場人物についてお伝えしました。
「合理的にあり得ない」はちょっと疲れがたまった時に気軽に楽しむ本として最高です。
ぜひ一度手に取ってみてくださいね。